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幸あれ!!

心理学を学ぶ運営者が日々様々な幸を追求するブログです。

『花のれん』山崎豊子

 大阪と言えば笑いの町というイメージはいつからついたのであろうか。現在の大阪もそのイメージを変わらず守っている。演芸場や寄席が大小含めて数多く存在し、笑いを求めて多くの人々がそこを訪ねる光景は、この話の主人公、「多加」が大阪に寄席を創設した頃から変わらないのであろう。

 

 この物語は、吉本興業の創業者である吉本せいをモデルにしている言われている。作中の中では、当時の船場の様子や堂島の様子、芸者や落語がの気風が細かく描写されている。

 

山崎豊子の作風スタイルは、モデルとなる主人公を中心にそこからどんどんとストーリーが展開されていくが、まさにこの物語はその概念にピタリと合った山崎文学の一つだ。

 

 興業を打つということは、非常にダーティなイメージを払拭しきれない私個人であるが、それ以上に、幾多の戦争という悲劇と困難の中でも芸人のために笑いのために、主人公多加が、笑いの場を守るために尽力したこと、さらには成功のために失ったものに焦点が当てられている。

 

 現在、技術の発展で実際に足を運ぶことなく芸を鑑賞することが当たり前になった。考えてみると、蓄音機が開発されるまでは、オーケストラの演奏もオペラも劇場に行くしか鑑賞する術がなかった。今のように、ネットでいつでもどこでも好きな時間に楽しめるものではない。

 

 

 ゆえに、その時代の演芸がいかに市民の娯楽であったのか。当時に戻った気分で、目を閉じると出囃子がなるなか、緞帳がゆっくりと上がり、少しずつ大スターの姿が視線に入る光景が目に浮かぶ。